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2016/4/19
【不動産取引】サブリースにおける保証金の承継の判例

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 賃貸人(X)が、賃貸人(X)と賃借人兼転貸人(Y)との間の建物賃貸借契約における地位承継特約によって、賃借人兼転貸人(Y)と転借人(Z)との間の建物転貸借契約に基づき転借人(Z)が賃借人兼転貸人(Y)に差し入れた保証金の返還義務を負うとされた事例があります。
(東京高裁H11・12・21判決 金融商事判例1093-26)

この事例では、次の内容の契約条項が含まれていました。

  • ① Xは、Yが原賃貸借契約期間中、Yが適当と認めた第三者に適宜転貸することを承諾する。但し、Yは、転借人、転借条件等につき事前にXに通知し、必要に応じて協議する。Yは、Xから要求があるときは、転貸借の状況につき報告する。Xは、Yが転借人から保証金の預託を受けることを承諾する。
  • ② 原賃貸借契約が、期間満了、解除、その他の事由により終了した場合は、Xは、Yが転借人との間に締結している転貸借契約を承継するものとし、Xは、Yに対し、Yが転借人から受領している保証金から、転借人がYに対して負担する債務を控除した残額の引渡を求めることができる。(地位承継合意)

 この後、Yは、Zとの間で転貸借契約を締結しましたが、Xに対する債務不履行を理由として、原賃貸借契約が解除されました。

 転貸借は、その前提として原賃貸借契約に基づく原賃借権があるものですから、原賃借権が消滅したときは、原則として、転貸借は覆滅します。但し、判例は、原賃貸借契約が合意解約されたときは、賃貸人は、信義則上、原賃貸借契約の解約の効力を、転借人に対抗できないとしています(最一小S37・2・1、最三小S62・3・24)。

 この原則からすると、原賃貸借契約の終了により、転貸借(Zの地位)は覆滅させられることになりそうですが、他方で、本件には、前記の地位承継合意があります。これを踏まえて、本件は、Zが、Yに支払った保証金が地位承継合意によりXに承継されたとして、保証金の返還をXに対して求めた事案です。

 この事案において、裁判所は、結論として、転貸借契約上の転貸人Y地位が、前記の地位承継合意に基づいて、賃貸人Xに承継され、賃貸人Xは、転借人Zに対し、ZがYに差し入れた保証金の返還義務を負うとしました。

 Y(サブリース事業者)が、債務不履行によって原賃貸借契約を解除されるというケースでは、Yが所在不明になっていたり、支払能力がなかったりする場合がありますから、賃貸・転貸のフレームがXZ間でどのように処理されるべきかという問題が生じます。

 本件のように、原賃貸借契約に地位承継合意があるような場合には、賃貸人Xは、Zに対してZが差し入れた保証金の返還義務を承継されられるリスクがあることになります。但し、この裁判例は、地位承継合意のみによって結論を導いたのではなく、結論は事案によります。

 このような地位承継合意は、XY間の原賃貸借契約が消滅しても、Zの地位を守るために設けられることがあります。国土交通省が作成しているサブリース住宅原賃貸借標準契約書には、次の条項があらかじめ設けられています。

(地位の承継)

  • 第18条 本契約が終了した場合には、甲は、転貸借契約における乙の転貸人の地位を当然に承継する。
  • 2 前項の場合、乙は、転借人から預かっている敷金、賃貸借契約、その他地位の承継に際し必要な書類を甲に引き渡さなければならない。

 このため、原賃貸となる建物オーナーであるXは、地位承継合意がある場合には、Yとの原賃貸借契約を解除しても、Zとの転貸借契約におけるYの地位を承継させされる場合があることを認識しておく必要があります。

 実際には、Xにとっては、Zは何の面識もない第三者で、これがいきなり契約当事者として現れるということになりますから、Xとしては困惑することになるかもしれません。Zの属性がXにとって望ましいものでなければ、事態は重大かも知れません。 他方で、転貸借契約上の賃料は、正常な転貸借であれば、原賃貸借契約における賃料よりも高額となるのが通常ですから、属性の分からないZとの契約関係が発生するとしても、受取賃料の額は増額する場合もあります。

 トータルでどちらがよいのかは一概に判断できるものではありませんが、サブリースに臨もうとする建物所有者は、転貸借契約上の転貸人の地位を承継させられる場合があることを理解しておく必要があり、これを避けるためには、事前に契約書の条項を点検しておく必要があります。

 

 

 

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