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2017/3/24
【遺言・相続】公正証書遺言が無効となるとき

認知症と公正証書遺言

公正証書遺言は、公証人が作成に関与しますから、多くの場合、遺言が無効となることはありません。

しかしながら、遺言者が遺言をするときに認知症などのために遺言をする能力を欠いていた場合には、遺言は無効となり、このことは公正証書遺言でも変わりません。

公証人が関与しているからといって、遺言者に遺言能力があったということはできません。これを明示的に示す裁判例もあります(高知地判H24.3.29判タ1385-225)。

遺言が無効となるかどうかは、遺言の内容が平易なものであるか複雑なものであるか、そして、遺言者の病状から遺言の内容を理解できる状況にあったかどうか、という観点から検討され、内容の難易と理解力の程度が関連づけられて判断されます。(この他、遺言に至った経緯その他の事情も合わせて判断されます。)

以下に、公正証書遺言が有効か無効かが争われた例で、無効とされたものと有効とされたものを一つずつ紹介します。

1 公正証書遺言が無効とされた例(遺言時84歳)
公正証書遺言が無効とされた裁判例も現にあり、例えば、ご紹介する例では、遺言の内容の難易度について、次のように判断しています。

「評価額合計が数億円にも及ぶ多額かつ多数、多様な太郎の保有資産を推定相続人全員に分けて相続させることを主な内容とする上、これを太郎の意図どおりに実現するためには、自らの保有資産の種類や数、評価額の概略を把握している必要があるほか、従前被控訴人らや甲野夏子が受けた生前贈与などの遺留分に関わる事情をも把握する必要があるなど、相応の記憶喚起及び計算能力を必要とする。」

この判断からすると、遺言の内容については、相当程度複雑なものと認定しているということができます。この上で、遺言者の能力については、

「平成17年当時の太郎は、多発性脳塞栓等の既往症があり、認知症と診断されたこともあり、記憶力や特に計算能力の低下が目立ち始めていたのである。そして、病気入院中でベッドに横になっていた太郎が、顔の前にかざされた遺言公正証書の案をどの程度読むことができたのかも定かではない。そうすると、C公証人の説明に対して「はい」と返事をしたとしても、それが遺言の内容を理解し、そのとおりの遺言をする趣旨の発言であるかどうかは疑問の残るところであり、この程度の発言でもって、遺言者の真意の確保のために必要とされる「口授」があったということはできない。」

として、結論として公正証書遺言を無効としました。(この例では、公正証書遺言をするために必要な「口授」の要件に関連づけた判断がされています。)(大阪高裁H26.11.28判タ1411-92)

2.公正証書遺言が有効とされた例(遺言時90歳)
これに対して、平成12年1月に作成された公正証書遺言に関し、重度の認知症があったとしながら、遺言能力があり遺言を有効とした例もあります。これによると、遺言に先立つ時期の遺言者の状況について、次のように判断されています。
  • ① 平成9年3月の時点で既に軽度の痴呆が見られていたところ、平成10年12月ころには、経管栄養チューブを自己抜去したり、不潔行為等が頻回に見られるようになったが、その後、いったん、問題行動は収まった。
  • ② 平成11年11月16日に実施された長谷川式簡易知能評価スケールの結果は30点満点中4点と非常に低い得点であった(なお、長谷川式簡易知能評価スケールにおいては、一般に、20点以下を痴呆、21点以上を非痴呆とした場合に最も高い弁別性が得られるとされ、また、痴呆の重症ごとの平均得点に照らすと、4点は「非常に高度」の場合のほぼ平均点に相当する。)。
  • ③ 平成11年12月から平成12年1月にかけては、再び、不潔行為や暴力行為、異常行為等が見られるようになっていた。
  • ④ ①から③により、平成12年1月24日の遺言作成当時、Aの痴呆は相当高度の重症であった。
  • ⑤ 他方、Aが平成11年12月から平成12年1月24日までの間に看護婦と交わした会話の内容をみると、Aは、第2遺言作成当時、他者とのコミニュケーション能力や、自己の置かれた状況を把握する能力を相当程度保持していたと考えられる。

  • この裁判例では、以上のように認知症の程度を重度のものと判断する反面、遺言の内容は、

    「わずか3か条から成るものにすぎず、また、自分の一切の財産は被告に遺贈し(なお、第2遺言において明示されたAの財産は、Aの自宅の土地建物だけであった点も留意されるべきである。)、葬儀の執行も被告に任せるという、比較的単純な内容のものであった」と認定し、その他の事情を合わせて、「遺言をするのに十分な意思能力(遺言能力)を有していたものと認めるのが相当」

    と判断し、結論として公正証書遺言を有効としています。(京都地裁H13.10.10)

    3.まとめ
    以上のように、遺言能力があるかどうかは、各種の事情の総合判断となりますが、内容の難易を検討し、その内容に見合う能力があったと言えるかが遺言者の病状等に基づいて判断され、このことは公正証書遺言であっても同じであることが分かります。

    このため、認知症の症状が、ある程度重症であっても、内容が簡単であれば遺言の能力があったとの認定に至る場合もありますし、逆に、認知症の症状が重症でなくても、内容が複雑であれば遺言能力がなかったと判断される可能性も否定できません。

    先に引用した京都地裁の裁判例では、以下のように、遺言については、その人の最後の意思なので、認知症の影響があるとしても、できる限り尊重されることが望ましいという価値判断が示されています。

    「痴呆性高齢者であっても、その自己決定はできる限り尊重されるべきであるという近時の社会的要請、及び、人の最終意思は尊重されるべきであるという遺言制度の趣旨にかんがみ、痴呆性高齢者の遺言能力の有無を検討するに当たっては、遺言者の痴呆の内容程度がいかなるものであったかという点のほか、遺言者が当該遺言をするに至った経緯、当該遺言作成時の状況を十分に考慮した上、当該遺言の内容が複雑なものであるか、それとも、単純なものであるかとの相関関係において慎重に判断されなければならない。」

 

 

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