
今日は平成27年2月19日に下された最高裁判決(平成25年(受)第650号 株主総会決議取消請求事件)をご紹介します。
▼判決全文はこちらをご参照ください。
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/875/084875_hanrei.pdf
- 1 共有に属する株式について会社法106条本文の規定に基づく指定及び通知を欠いたまま当該株式についての権利が行使された場合において,当該権利の行使が民法の共有に関する規定に従ったものでないときは,株式会社が同条ただし書の同意をしても,当該権利の行使は,適法となるものではない。
- 2 共有に属する株式についての議決権の行使は,当該議決権の行使をもって直ちに株式を処分し,又は株式の内容を変更することになるなど特段の事情のない限り,株式の管理に関する行為として,民法252条本文により,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決せられる。
つまり、株式が共有(厳密には「準共有」と言います)されている場合においては、共有者の1人を権利行使者と定めて当該株式を発行する会社にその者の氏名を通知しなければ、たとえその会社が同意しても議決権などの株主としての権利を行使できないというものです。また、共有者の持分価格の過半数の決議があるときは、権利行使者の指定と会社への通知がなくとも議決権は行使できるとも述べています。
ここで留意しておきたいのは、創業者社長に多く見られるような1人株主や大株主が亡くなり相続が開始された場合において、遺言書がなく遺産分割も済んでいない間は、被相続人が有していた株式の全てが相続人の共有になるということです。例えば、株式会社の発行済全株式1000株を有する被相続人が亡くなり、相続人が2人の子である場合、1000株全てを2人の子が持分2分の1ずつで共有することになります。普通預金のように、相続開始により500株ずつに当然分割されるわけではありません。
相続人が多数存在する、または、被相続人に前妻との間の子や婚外子などの普段行き来のない相続人がいた場合などは、権利行使者の指定や持分価格の過半数による決議を行うことも困難となり、議決権行使、ひいては会社の運営そのものに重大な支障が生じることも考えられます。
以前からよく言われるところですが、早い段階から会社の後継者を想定して遺言書を作成するなど、特定の者に株式を承継させるための対策を講じておく必要性はより高まったと言えるでしょう。