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2024年6月28日 投稿者: 妻鹿直人

賃料増額のことについて 減額時代から増額時代に変わって思うこと テナント側の難しさ

賃料増額のことについて 減額時代から増額時代に変わって思うこと テナント側の難しさ
2024年6月28日 投稿者: 妻鹿直人

1 雰囲気

コロナ禍が始まったのが2020年のことでした。そのころには不動産の市況はどうなるのかなと思っていましたが、体感的には、一時的にはともかく、少なくともトレンドとして下落するということもなく、また、その後の円安・インフレといったことで、不動産価格は都市部では上昇している印象を持っています。そのあおりを受けて、そこここで賃料増額の声を聞くようになりました。

法実務的には、長らく賃料減額の時代が続いてきたといって間違いないと思います。デフレの期間が長かったこともあって、テナントからの賃料減額に対し、オーナーが紛争になる前に賃料減額を飲んでくる例もありましたし、紛争化してオーナーから返す刀で賃料増額が出ても、減額の程度はともかく減額の結論になる例が多かったと思います。

しかしながら、近時は前記のとおり賃料増額の声を聞くことが増えてきました。最近でも、オーナーから賃料増額を出した例がありましたが、テナントは思いのほか増額請求を受け入れるようなこともあって、社会の雰囲気の変化を感じます。増額請求があっさり受け入れられると、オーナーとしては、もうちょっと高いところから入っておけばよかった、という気分にもなります。賃料増額の局面このあたり(最初のオファー)をどう設定するかは、一度上げるとしばらく上げにくいということもありますから、課題の一つかもしれません。

2 賃料増額は緩和された明渡請求のようです

賃料減額と賃料増額は、借地借家法32条(建物)又は11条(土地)ですから、法的には同じくくりとして考えますが、実際的に配慮を要する事項の違いとして、賃料減額の場合は、それによって不動産オーナーがたちまち倒産するような話を聞くことはありませんでした。しかし、賃料増額の局面では、損益がギリギリで営業しているテナントでは、賃料増額が、たちまち退店の判断を迫られるような局面になり得ます。

賃料増減額請求は、ギリギリ争えば、不動産鑑定評価の問題に入ってゆき、多くの場合、訴訟で鑑定の申立てに基づいて不動産鑑定士による継続賃料の鑑定評価が行われます。この裁判所鑑定をいかにコントロールするかが訴訟上の課題になるわけですが、不動産鑑定評価は、端から端まで定量的に計測・測定されるわけではないですから、判断が予想していた範囲外にブレるリスクが常にあります。

テナントにとって、意外な増額鑑定が出てしまうと、たちまち損益を圧迫し退店に追い込まれるリスクを抱えることになります。賃貸借契約の動態、というのでしょうか、局面を俯瞰して考えると、賃料増額は「テナントを入れ替えればもっと高い賃料で貸せるはず」というオーナーの判断を含んでいるとも考えられますから、これは、緩和された明渡請求という見方をすることが可能です。

テナントの立場からすると、意外な増額鑑定によって退店を迫られる場合、これは、賃借人からの解約告知なり中途解約になりますから、立退料が発生する局面になりません。このため、賃料増額の時代のテナントは、オーナーの請求する増額賃料が、もし通ってしまった場合に営業の存続が可能であるかどうかを考えなければなりません。もしこれが難しければ、オーナーに対し、賃料増額の交渉・紛争が継続している間に、任意に退店するから、移転のための費用について配慮して欲しい、という交渉を行うかどうかを考えなければなりません。

この場合、もちろん、当然に立退料が発生する局面ではありませんが、オーナーからすると「テナントを入れ替えればもっと高い賃料で貸せるはず」という計算が潜在しているはずですから、それならテナントの移転にいくらか協力しましょうという機運が現れる場合があります。

テナントからすると、従前の営業場所を失うことになるので残念なことではありますが、移転に際し、その費用負担の全部又は一部を免れることが出来るというメリットがあります。オーナー側では、一時的な費用負担が発生しますが、次に良い条件でテナントを入れることができるというメリットがあります。このため、呉越同舟みたいな着地ができれば、円満解決の一つの形ということができるのではないかと思います。

3 減額時代との対照

賃料減額が趨勢であったころは、賃貸借契約が普通借家契約であれば、オーナーは、賃料減額が確定したときはこれを受け入れざるを得ず、もちろん賃貸借契約を終了させることもできませんでした。これに対して、賃料増額の時代では、賃料増額請求が明渡請求の機能を事実上(あるいは実質的に)含むことになりますから、都市の、町の代謝を促進する可能性があります。テナントに目線を置くと厳しい局面がありうることが否定できないですが、社会全体としてみれば、その機能を向上させる効果があるといえるのかもしれません。目線をどこに置くかによって功罪を感じわけることができます。

高度成長期からバルブ期にかけての賃料増額時代では、上記のような調整を類型化して、3年ごとに●%増額する、といった特約がありました。今回の賃料増額のトレンドは、過去の賃料増額時代のように、社会が全体として一本調子で成長する、というような漠然とした将来予測みたいなものが醸成されているとは感じ難く、どちらかといえば中長期にはどうなってゆくのか分からない、という状況ですから、賃料が自動的に改定される特約を付する社会的な素地はいまのところないと言ってよいと思います。

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