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2025年5月5日 投稿者: 妻鹿直人

第三者のためにする契約[三為契約 / 直接移転取引]3/3

第三者のためにする契約[三為契約 / 直接移転取引]3/3
2025年5月5日 投稿者: 妻鹿直人

[承前]

9.リスクを回避するために(主にAの視点で)

前記(6.)のとおり、Cはぼんやりしていると、宅建業者Bに悪意があれば、本来もっと安く買えたはずのところを高値で買ってしまう可能性があります。逆に、前記(7.)のとおり、Aは、そんなもんかなと思ってお任せしていると、宅建業者Bに悪意があれば、本来Aが得られたはずの売買代金の一部を、宅建業者Bに抜かれてしまう場合があります。

この場合、Aの立場からは、三為契約によることに気が付いていれば、決済前であれば、「BC間の売買契約書を見せて欲しい。」とBに申し入れてみるということが考えられます。もし、売買代金を黒塗りするなどして開示してこない場合は、(その時点でかなり怪しいわけですが)「売買代金も見せて欲しい。」ということが考えられます。

この申し入れはBだけでなく司法書士にもしてよいです。

そして、Bも司法書士も、BC間の売買代金を開示しない場合は、そのようなBは信用できないので、その時点でAB間の第1売買契約はキャンセルするかどうか、考えないといけません。

この場合、第1売買は先に締結済みなので、Bは、「キャンセルできませんよ。履行しないと債務不履行になりますよ。」などとAに迫ってくるかもしれません。これに対しては「Cとの直接売買契約に改めて欲しい。」とやってみてもよいですが、このへんまで来ると、知識経験の点でも時間的にも精神的にもAが一人で立ち向かうレベルを超えてくると思うので、弁護士を介入させることを考えた方がよいかもしれません。

Cに仲介の宅建業者があるときは、Cの宅建業者に尋ねてみるという方法もあります。但し結論としては、Cの宅建業者は、Bとの関係性を重視すると思われますので、色よい返事は得られない場合が多いと思います。

登記原因証明情報に、第1売買と第2売買の代金の額を記載することにすれば、リスクは減らせると思うのですが、現在は、そのような取り扱いになっていません。

10.司法書士

ご承知のとおり、日本司法書士会連合会から司法書士会会長あて「直接移転取引に関する実務上の留意点について(お知らせ)」(日司連発第1339号平成19年12月12日)により、「直接移転取引について」(平成19年12月12日日本司法書士会連合会不動産登記法改正対策本部)として、直接移転取引に関する司法書士の実務上の留意点が周知されています。

これによれば、直接移転取引に関与する司法書士は、第1売買と第2売買の双方の内容を当然に確知し又は確知すべき立場にあります。このため、売主Aとの関係で、司法書士自身が「売買代金に差があるとは知らなかった。」という説明は、通常成り立ちません。

また、前記「直接移転取引について」では、第1売買について無効・取消・解除原因等があってはいけませんので、司法書士として、第1売買に抗弁事由がないことを確認する必要があるともされています。Aの立場からは、三為契約を利用して、Bに騙されているとか、少なくとも売買代金に差がある事実を知らされなかったことによって錯誤に陥っていたとの認識を生じることになりますので、ここ(売買代金の差額)に抗弁事由がないことを、司法書士の先生方からAに対して積極的に確認して頂くことが、Aの被害や後日の紛争を避けるために望ましいかもしれません。
実際上、三為契約では、民法539条により、AはBに対する抗弁をもって、Cに対抗することができ、Cは第1売買に関し善意の第三者として保護されませんから、AB間で紛争を生じると、Cも巻き込んでしまう可能性があります。

また、前記(8.)で示した裁判例によれば、宅建業者Bは、Aに対して、合理的根拠がなければ、売買契約は採用せずに媒介契約に止めるべき義務を負います。同裁判例では、その根拠として、宅建業者の信義誠実義務、報酬規制などに言及されています。不健全な三為契約では、宅建業者が宅建業法における報酬規制を潜脱して、これを超える報酬を得るための違法な手段として使用されているおそれがあります。

素人であるAやCは、三為契約で何が行われているのかを容易には理解できないことが通常ですから、売買契約に通常弁護士が関与する実務が確立されていない状況のもとでは、移転登記手続のために必ず取引に接点が生じる司法書士が指摘してあげるのでなければ、AやCがリスクを確知することができにくいです。

前記のとおり「直接移転取引について」では、第1売買に抗弁事由がないことを確認する必要がある(「抗弁事由の存しないことを甲に対して確認する必要があります。」)とされています。また、本人の自由意思により契約を締結するために、必要に応じて、説明・助言が必要となる場合があるともされています。これらの記述や司法書士法、司法書士倫理を参照すれば、合理的根拠なく売買契約が選択されていたり、宅建業法の報酬上限を超えた差額が設けられているような場合など、一定の場合には、AやCに対する司法書士の責任(Bの違法行為又はその可能性を告知すべき委任契約上または不法行為法上の義務違反など)が認定される場合もゼロではないと思います。

司法書士の先生方には、特定のあるいは一定の範囲の宅建業者との付き合いがあるために、わざわざ取引を成立させない方向のアドバイスはしにくい向きもあろうかと推察されます。ですが、司法書士と委任契約があるのはAあるいはCであって、Bではありません(三為契約では、Bは登記手続に登場しないので、Bが司法書士に委任状を出すことはありません。)。局面によっては、司法書士は誰のほうを向いて仕事をしているのか、ということにもなります。

司法書士の先生には、知識経験のないAに対して、適切に説明助言を尽くして頂き、A本人の自由意思により契約が締結できるように、宅建業者Bの違法行為を助長することの起こらないように、多少でも配慮を頂けると、三為契約を使った報酬上限の逸脱行為(AやCに損害を与える行為)を減らすことができるかもしれません。Aに対して、第2売買の代金の額は告知しないでよいと考える向きもあるようですが、本当にそうでしょうか。

11.おわり

平素宅建業者の立場で仕事をする場合が多いので、契約は自由な発想にもとづき多様であってよい(多様であるべき=規制は少ないほうがよい)と考えています。この記事の最初(1.)で書いたとおり三為契約にも有意義な使い方があるので、それによって経済活動が活発になればと思います。その一方で、三為契約には、宅建業法の報酬上限規制を潜脱する違法行為を発生させる類型的な危険があると感じます。宅建業者同士の取引であれば、切った張ったでやってもらえばいいのですけれど。

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