オフィスでも飲食店でも物販店でも、賃借している部屋の電気料金/電気代は、賃貸人から毎月賃料の請求と共に請求を受けて支払っている場合が多くあります。ですが、この電気料金が、どのような計算に基づいて算定されているのかが分からない場合があります。
賃貸借契約書において、電気料金の計算方法が具体的に定められているときは、その合意された計算方法によることになるでしょうけれど、電気料金の計算方法が具体的に定められている例はほとんどありません。多くの契約で、電気料金に計算方法は明らかにされていないと思います(請求単価が合意されている契約を見たことはありますが、その単価がどのようにして求められているのかは不明な契約でした。)。
単に専用部(賃借部分)の電気料金が、テナント負担とされているだけの場合には、賃貸人は、実額しか請求することはできません。
このため、賃貸人は、実額を超えて電気料金を請求することはできませんし、実額を超えてテナントから支払いを受けた電気料金の部分は、不当利得となり、テナントに返還することを要します。
賃貸人の立場では、電気設備や電気設備の管理・保守・点検などに要する費用であると主張したり、あるいは単に賃貸人の事務手数料であるといった主張が考えられますが、賃貸借契約において合意されている(合意に含まれている)といえるのでなければ、こういった主張は認められないのが通常です。
争われ方としては、なにかのきっかけで電気料金が超過払いになっていることに気が付いて、超過部分について遡って返還請求が行われる、という現れ方になることが多いと思います。この場合、超過払い期間が長いと消滅時効の問題を生じることがあり、また、そもそも電気料金のテナントへの割り振り計算方法自体について意見の一致を見ることができないために、解決が難しくなることがあります。
(裁判例)
東京地裁平成14年8月26日判決(東京地裁平成13年(ワ)第3650号 判タ1119-181)
東京地裁平成29年9月13日判決(東京地裁平成28年(ワ)第17843号)
(記事)