相続というのが家族の生活保障(扶養)なり潜在的持分の顕在化と説明するとしても、所有権絶対の原則を基本原理の一つに数える近代的な民法において、遺言という終意処分を認める場合には、遺留分は所有権絶対の原則に対する制約となります。遺留分においてその制約を正当化する実質的理由は果たして存在するのか、という感じがします。遺留分の趣旨が家族の生活保障(扶養)であるとするなら生活保障(扶養)のために必要な範囲で足り、遺産が多ければ遺産に対する遺留分の割合は少なくなり、遺産が少なければ遺産に対する遺留分の割合は多くなるべきもののように感じられます。このため、金額の多寡を問わず遺産全体に対する割合によって算定する方式の合理性が問われなければなりません。潜在的持分の顕在化というのは、親から子へ財産が引き継がれるという自然的・直感的な流れからはそりゃそうだなというように感じますが、近代的な民法においてそのような価値がどれほど法的に保護されなければならいのかとも思います。潜在的持分という用語は家産の承継というような前近代的な価値の残滓と感じられます。但しそれを全部否定するというのも直観的には勇気がいります。[2026/01/10]
遺留分侵害額請求権は遺留分権利者が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ったときから1年間行使しないときは時効によって消滅します(民法1048条)。相続開始のときから10年を経過したときも同様です(民法1048条)。相続の開始を知っただけではこの期間は進行せず、この期間が進行を始めるためには遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことも知らなければなりません。遺贈(この文脈では遺贈に特定財産承継遺言を含みます。民法1047条1項)の場合では、遺言執行者は遺言の内容を相続人に通知しなければなりませんから(民法1007条2項)、この遺言執行者からの通知の到達時期が、遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ったときにあたることに通常なろうかと思います。自筆証書遺言保管制度の下でも一定の事実が生じると相続人に保管の事実が通知されます。保管制度の利用のない自筆証書遺言は検認を要しますからそのときに相続人は遺言の内容を知ることができます。公正証書遺言で遺言執行者を指定しなければ、他の相続人に遺言内容を知られないで済む可能性がありますが、遺留分の時効期間(1年のほう)は進行を開始しないことになります。遺言執行者が任務を懈怠して相続人に遺言の内容を通知しなかったときも、遺留分の時効期間(1年のほう)は進行を開始しないことになります。[2026/01/09]

